花橘亭〜源氏物語を楽しむ〜紫式部ゆかりの地松浦なる鏡の神 鏡神社紫式部と鏡神社
本文へジャンプ
鏡神社|紫式部と鏡神社|源氏物語と鏡神社松浦宮の前の渚玉葛窟古墳まつらの姫達の宴  


紫式部と鏡神社





鏡神社一ノ宮
鏡神社 一ノ宮


 紫式部の歌集『紫式部集』には、筑紫の肥前へ下った女友達との贈答歌が数首、掲載されています。

 紫式部は父が越前守(えちぜんのかみ)になったことにともない、短い間ではありますが京から離れて越前国(えちぜんのくに=現在の福井県北部)で過ごしたことがあります。

 紫式部と和歌を交わしていた女友達もまた、父が肥前守(ひぜんのかみ)となったため父親とともに京から肥前国(ひぜんのくに=現在の佐賀県・長崎県)へ下ったのでした。

 紫式部は姉を亡くし、筑紫の女友達は妹を亡くしていることから、お互いを“姉君”・“中の君(=妹君)”と呼び合ったと『紫式部集』に収められている歌の詞書きに記されています。





紫式部の歌集『紫式部』集に登場 “松浦なる鏡の神” 鏡神社


 紫式部と筑紫の女友達との贈答歌。

『紫式部集』より


 筑紫(つくし)の肥前(ひぜん)といふ所より、文(ふみ)をおこせたるを、いと遥かなる所にて見けり。その返りごとに、

   あひ見むと 思ふ心は 松浦(まつら)なる
       鏡の神や 空に見るらむ



 返し、又の年持て来たり。

   行きめぐり 逢ふを松浦(まつら)の 鏡には
       誰(たれ)をかけつつ祈るとか知る



      『紫式部日記 付 紫式部集』(中野幸一:編/武蔵野書院:発行)より引用
訳:

 九州の肥前(現在の佐賀県、長崎県)という所から友達が文(ふみ)を寄越してきたのを、京よりとても遠い所<=越前の国府⇒福井県越前市>で見た。その返事に紫式部が詠んだ歌。

 あなた(=友達)に逢いたいと思う私(=紫式部)の心は、あなたが住む肥前の松浦の鏡の神が空から見てくださっていることでしょう。


友達の返歌が、翌年に持って来られた。

 行き巡り逢うのを待つという松浦の鏡の神は、誰のことを心にかけつつ祈っていると知っているのでしょう。あなた(=紫式部)のことを思っているのですよ。


歌の縁語:

逢うを待つ松浦(まつら)かけるが、それぞれ縁語になっています。

 平安時代の鏡は鏡台に掛けて使用されていました。そのため、“鏡を鏡台にかけること”“逢えるように願いをかけること”が縁語になっているのですね。


風俗博物館で撮影。鏡に顔を映す年若い女君。
鏡に顔を映す年若い女君


 上記の和歌に登場する「松浦なる鏡の神」が、現在の佐賀県唐津市にある鏡神社のことです。

 鏡神社は、古来、“鏡の宮”または“松浦(まつら)の宮”とも呼ばれていました。紫式部は肥前を訪れたことはありませんが、当時の鏡神社は都にも知られた神社であったと思われます。

 紫式部と和歌を交わした筑紫の女友達が誰であるのか諸説ありますが、一説によると、平維将(たいらのこれまさ)の娘ではないかと考えられています。
(参考:「紫式部伝―その生涯と『源氏物語』」著:角田文衞/発行:法蔵館)

 平維将の娘は、紫式部の父方の従姉妹にあたります。




紫式部と平維将女(たいらのこれまさのむすめ)との血縁関係


紫式部と平維将女の系図



 紫式部は『源氏物語』<玉鬘>において、肥前をはじめ筑紫の地理の細かい描写をしていますが、肥前で生活した平維将女(たいらのこれまさのむすめ)平維将夫妻から筑紫の情報を得ていたのだろうと推測されます。

 筑紫の女友達(=平維将女)は、紫式部との再会を果たせぬまま、筑紫の地で亡くなります。




紫式部の和歌「めぐりあひて・・・」もご覧下さい。




『源氏物語』の玉鬘と筑紫の女友達


 『源氏物語』に登場する姫君・玉鬘(たまかづら)は、京で生まれるものの筑紫で成育し、やがて京の光源氏の六條院へ迎えられるというシンデレラストーリーを歩みます。

 作家である紫式部の人生と作品を照らし合わせるのはナンセンスかもしれませんが、筑紫での生活ののち都に戻った玉鬘の人生を考えたとき、そこには筑紫の女友達への鎮魂が込められている・・・ような気がします。




撫子


【参考】
源氏物語の鑑賞と基礎知識 12 玉鬘 監修:鈴木一雄/編集:平田喜信/発行:至文堂
紫式部伝―その生涯と『源氏物語』 著:角田文衞/発行:法蔵館
平安時代史事典CD-ROM版 監修:角田文衞/(財)古代学協会・古代学研究書
発行:角川学芸出版
光源氏が愛した王朝ブランド品 著:河添房江/発行:角川学芸出版

「源氏物語の鑑賞と基礎知識」12 玉鬘 に収録の関係補助論文「玉鬘と紫式部集」では、紫式部の親友は肥前守(ひぜんのかみ)平維時の娘であるという説が有力だと紹介されています。

※『源氏物語』<玉鬘>巻において、鏡神社=“松浦なる鏡の神”を詠んだ和歌が登場します。


▲このページの一番上に戻る

お問い合わせ
Copyright(C) なぎ AII Rights Reserved
inserted by FC2 system