篝火(かがりび) 京都・大堰川での鵜飼の様子 |
にはかなる御饗応と騷ぎて、鵜飼ども召したるに、海人のさへづり思し出でらる。
(訳:急な御饗応だと大騷ぎして、鵜飼たちを呼び寄せると、海人のさえずりが自然と思い出される。 )
いと木繁き中より、篝火どもの影の、遣水の螢に見えまがふもをかし。〜(略)〜
「漁りせし影忘られぬ篝火は
身の浮舟や慕ひ来にけむ
思ひこそ、まがへられはべれ」
と聞こゆれば、
「浅からぬしたの思ひを知らねばや
なほ篝火の影は騒げる
〜(略)〜」
(訳:たいそう茂った木立の間から、いくつもの(鵜飼の)篝火の光が、遣水の上を飛び交う螢のように見えるのも趣深く感じられる。
明石の君 「あの明石の浦の漁り火が思い出されますのは
わが身の憂さを追ってここまでやって来たのでしょうか
間違われそうでございます」
と申し上げると、
光源氏 「わたしの深い気持ちを御存知ないからでしょうか
今でも篝火のようにゆらゆらと心が揺れ動くのでしょう」 )
東の池に舟ども浮けて、御厨子所の鵜飼の長、院の鵜飼を召し並べて、鵜をおろさせたまへり。小さき鮒ども食ひたり。
(訳:東の池に舟を幾隻か浮かべて、御厨子所の鵜飼の長が、院の鵜飼を召し並べて、鵜を下ろさせなさった。小さい鮒を幾匹もくわえた。)
船を用いない徒(かち)遣いの鵜飼の様子 風俗博物館 2005年展示「六條院行幸」より |
岐阜・長良川の鵜飼 『写真提供:(社)岐阜県観光連盟』 (社)岐阜県観光連盟⇒http://www.kankou-gifu.jp/ ※長良川の鵜匠は、宮内庁に属していらっしゃいます。 |
嵐山通船株式会社さんの「嵐山宮廷鵜飼船」 2009年8月に京都定期観光バス「宮廷鵜飼と夕景の嵐山」コースで、鵜飼を鑑賞しました。光源氏と明石の君も見た大堰川の鵜飼の篝火です! 画像をクリック!! |
【参考】 | |||
---|---|---|---|
『源氏物語の鑑賞と基礎知識 No,20 絵合・松風』 |
監修:鈴木一雄 | 編集:田中隆昭 | 発行:至文堂 |
『源氏物語の鑑賞と基礎知識 No,31 梅枝・藤裏葉』 |
監修:鈴木一雄 | 編集:河添房江 | 発行:至文堂 |
『源氏物語の鑑賞と基礎知識 No,33 薄雲・朝顔』 |
監修:鈴木一雄 | 編集:小山利彦 | 発行:至文堂 |
『源氏物語と京都 六條院へ出かけよう』 |
監修:五島邦治 | 編集:風俗博物館 | 発行:光村推古書院 |
『平安時代史事典』CD-ROM版 | 監修:角田文衛 | 編:古代学協会 古代学研究所 |
発行・角川学芸出版 |